「学年違うけど、このメンバーを成績順に言ったら、葉子と山岡君がダントツだからね。
ヒロ君と私なんて、どうせ並レベルですよ〜」
私が冗談交じりに口を尖らせた。
「コレコレ、アカ。この男と私を同類にしないでおくれよ」
「葉子先輩と、トシって、二人とも学年トップクラスじゃないですか?」
葉子の反論に対して、更にヒロ君が返した。
「ちが〜うのっ!私の成績は自分自身の努力によるもの、塾だって真面目に通ってるし、
自習だって、みんなの何倍もやってるわけよ。でもでも、この男の成績はほぼ天賦の才ってもんよ!
こら、トシ!ヒロのケーキ横取りしようとしてないで、昨日の放課後に何やってたか、言ってみぃ?」
「えっ!?あっ!おい!トシ!俺のケーキだぞ!」
「・・・モグモグ・・・昨日?家に帰ってからは、ずっと読書に明け暮れていたぞ?」
「何の本よ?」
「・・・光田可南子の写真集」
一瞬の静寂が辺りを包む。
「エロ本やんけーっ!!」
バシッ!葉子の唐竹割りが山岡君の脳天を直撃した。
「っ痛ええぇえっ!!」
「だからアンタはむかつくって言ってるんよ〜!!」
「エロ本じゃない!グラビア写真集だ!」
「どっちも同じじゃ〜!!」
「昨日の英語・・・事前勉強無しで挑むなんて・・・やっぱトシの頭は出来が違うんだな」
葉子と山岡君の押しも押されぬ漫才トークを前にして、ヒロ君がボソリと呟いた。
「まっ。まぁまぁ。テストの話はそれくらいにしておこうよ。憂鬱になるだけだしさ。
・・・今はそうだなぁ。
もう少ししたら始まる春休み、何して遊ぶか予定でも立てない?」
私は両手を手前でヒラヒラさせて、場を取りもとうとした。
「春休み!そうそう!私とアカ的に、4月から受験受験で周りがうるさくなるからねぇ。
最後の息抜きに色々楽しんでおかなきゃ!」
「・・・調子のいい奴・・・」
「トシ〜私の怒りの矛先が変わっただけ、ありがたいと思えよ〜」
「とは言っても、明日から答案返ってくるから、また現実に引き戻されるんだよな〜」
ヒロ君がまたテストの話に戻した。
「現実に引き戻される」そう言った。
ザッザッ・・・。足音が近づいてきた。確実にこちらに向かっている。
私は現実に引き戻された。
− 第三話 終 −
|