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『智一・美樹のラジオビッグバン』(日曜日:25:30〜26:00 / 文化放送) の番組内で、関智一さんが朗読しているものをテキストにまとめたものです。 |
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シュラキ外伝 「木漏れ日の神子(かみこ)」
5月6日放送分 : 第 一 話 |
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今から語るのは、この広い世界の長い歴史に比べれば、きっと、ほんの一握りの露草が、
宵闇をそよぐ風になびいて落とした、一滴の雫に過ぎないのかもしれない。
それは小さく、儚く、そして脆い。
けれど私にとっては、長い年月を掛け大地が作った、輝く鉱石よりも美しく、
冬を越え雪の天井を突き破った春の芽吹きのように活き活きとした、生命の物語であった。
かけがえの無い、大切な、私だけの輝き。
シュラキ外伝、「木漏れ日の神子」。第一話。
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全く滑稽なものだ。
当時の私は、威勢が良いだけの、ただの粋がる青二才に過ぎなかったろう。
まだ若かったのだ。 と、今となっては思う。
あれは昭和十一年の春のこと。 大学卒業を間近に控えた私に、突然訪れた転機。
なんと学生時代に作った自己の研究が認められ、その題材にした内容を元に、
なんと研究機関が設けられるという。 寝耳に水だった。
噂は瞬く間に広まり、周囲からは神童と呼ばれ、数多くの羨望の眼差しが向けられた。
私が研究していたのは 「伝統芸能の起源と民族に与える影響」 である。
そもそも伝統芸能とは、芸能と言っても大衆娯楽とは異なり、宗教や神学に基づく所が大きい。
自分自身が楽しむために行なうのか、神やら仏門やら、信じる何か、
崇拝するに足る何かを対象として、行動するのか、という所が違う。
まぁ前置きはおいておこう。
私はその研究の中で、一つの事実に気付いた。
神楽と呼ばれる伝統芸能がある。神が楽しいと書いて神楽。
古事記や日本書紀といった日本古来の神話を元に作られた、神に捧げる舞の一つである。獅子舞もその一種だ。
現代において神楽の種類は数多く分類され、それこそ地方によって全く異なるものだったりする。
神楽という伝統芸能、そのうちの一つの演目に違和感を覚えたのだ。
演目の名前は「朧(おぼろ)の曲」。
記された命の息吹。玉の緒。寝覚めぬ魂。
では、ここに綴ろう。朱羅姫(シュラキ)の物語を。 |
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第 ニ 話 : 5月13日放送分 → |