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『智一・美樹のラジオビッグバン』(日曜日:25:30〜26:00 / 文化放送) の番組内で、関智一さんが朗読しているものをテキストにまとめたものです。 |
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シュラキ外伝 「木漏れ日の神子(かみこ)」
9月16日放送分A : 最終話(第 十七 話) |
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「いとおしい…?その病が…?」
「あぁそうじゃ。この痛みも辛さも、妾が人間であるという事の証明ぞ。
妾は人外の存在、じゃが我が身を苛まれ、苦しみを感じた時にこそ、自身がまだ人であると思い返す事ができるのじゃよ
なんと潔く、気高いのだろうと思った。
この伽乃という女性と出会ってからの私が、彼女のどこに惹かれていったのか、ようやく分かった気がした。
朱羅姫という闇の世界に引きずり込まれようとする中でもがき手を伸ばし、人間である事にすがり付こうとする、
生きる事への執着する美しさ。
これが私の目には、謎めいた日本古来の伝承のように、神秘的で魅惑的に映ったのだろう。
「何を素っ頓狂な顔をしておる?ほら、そろそろ着くようじゃぞ」
「あっ…。ああっ」
こうして私は実家に戻った。数ヶ月ぶりの我が家だった。伽乃を迎え入れ、静かに暮らし始めた。幸いここまで軍隊の手は延びず、追っ手は完全に消え去ったかに思えた。
数年の月日が流れた。伽乃は以前と比べると顔色も良く、幾ばくか調子も良くなったかに思えた。
そんな時、一人の将校が我が家を訪ねてきた。最初は伽乃を狙ってきたのかと思った。
「赤紙…」
私への召集令状だった。いよいよ欧米各国との緊張が高まってきた時代、これまで私は政府公認の研究員としての肩書きが残っていたようで軍への配属を免れていたのだが…。ここへ来てその効果も失われた、というわけか。
「ど、どうするのじゃ?」
「ここで断ってしまうと、お前の所在が知られる可能性もある。大人しく従うさ」
「な、なんじゃと…」
「なに、軍の演習で少し海外に行くというだけさ。数ヶ月もすれば戻ってこられる」
「妾はその頃には死んでおるやもしれんぞ」
「最近は身体の症状も良くなってきたじゃないか?」
「違う。焔舞が始まれば、闘いの衝動に耐えられなくなり、そして焔舞へと身をゆだねる」
「それは一番無いさ。だって伽乃は人間だ。誰が何と言おうがお前は、人間なんだ。
人間は焔舞なんかじゃ死なない。お前が死ぬのは、人としてだろう?」
「主も…言うようになったのう」
結局私が帰ってきたのは、三年後の春だった。
新緑の芽吹く季節。木漏れ日の中で小さな影と戯れる巫女装束が、私を出迎えた。神々しく美しく、そして優しかった。
木漏れ日の神子。かけがえの無い、大切な、私だけの輝き
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シュラキ番外編
『シュラキ外伝 「木漏れ日の神子」』
をご覧頂き有り難う御座いました。
これからのシュラキもどうぞご期待ください!
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← 第 十六 話 : 9月16日放送分@ |
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