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ラジオ用番外編
 
智一・美樹のラジオビッグバン』(日曜日:25:30〜26:00 / 文化放送) の番組内で、関智一さんが朗読しているものをテキストにまとめたものです。
 
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シュラキ外伝 「木漏れ日の神子(かみこ)」

6月10日放送分 : 第 六 話

 

ザッザッザッ。

物々しい音と共に、一糸乱れぬ隊列が私の真横を通り過ぎていった。
苔色(こけいろ)の軍服に身を包んだ将校達、陸軍だ。
私が上京してくる少し前に、青年将校達が軍の重臣の謀殺を計るという事件があったらしい。

詳しくは分からないが、その影響なのか、街中を歩いていても、
巡回している軍人の姿をよくみかけた。 戦火の火種は、もはや国外に留まらないという事か。

そんな明日の我が身も知れぬこの時代に、私は徴兵の任も解かれ、
「伝統芸能の起源と民族に与える影響」について、日々研究に明け暮れていた。

ただ先日感じた違和感、隣で研究を進める学者達の格の違いに萎縮させられ、
居場所を失ったような感覚に陥ってから、どうにも手が進まず、
こうして暇を見つけては、帝都の街をブラリと散策に耽ったりした。

「とは言え、のん気に散歩をする雰囲気でもないか」

去り行く隊列を見送りながら、そう呟いた。


そのままトボトボと歩き続けること数刻、眼前に見覚えのない景色が広がった。
そこは小高い丘の中腹にあり、住宅街の中に埋もれるようにひっそりと作られた 小さな公園であった。

もう花は咲いていないが、桜の木が何本も植えられていた。
今はもう新緑の季節を迎えている。
日の光を浴びて、葉が青々と照りかえっていた。

「眩しいな・・・」

太陽の光を浴びたのも、何だか久しぶりな気がする。
木々の隙間から洩れてくる輝きが、目の奥に染みてきて、とても痛かった。
でもすがすがしい痛みだった。
日の光とは、こんなに気持ちの良いものだったのか。

その直後の事だった。

ピシッ、ピシッ、という何か液体が飛び散る音が数回聞こえた後で、 ドサリと物が倒れる音がした。

音の方向を振り向く私。

そこにあったのは、赤い袴(はかま)と純白の衣(きぬ)を身に纏い、横たわる女性の姿だった。

 

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