 |
|
『智一・美樹のラジオビッグバン』(日曜日:25:30〜26:00 / 文化放送) の番組内で、関智一さんが朗読しているものをテキストにまとめたものです。 |
|
05/06 | 05/13 | 05/20 | 05/27 |06/03 |06/10 |06/17 |06/24 |07/01 |07/08|07/15|08/12 |
|08/19|08/26|09/09|09/16@|09/16A |
|
シュラキ外伝 「木漏れ日の神子(かみこ)」
6月10日放送分 : 第 六 話 |
|
|
ザッザッザッ。
物々しい音と共に、一糸乱れぬ隊列が私の真横を通り過ぎていった。
苔色(こけいろ)の軍服に身を包んだ将校達、陸軍だ。
私が上京してくる少し前に、青年将校達が軍の重臣の謀殺を計るという事件があったらしい。
詳しくは分からないが、その影響なのか、街中を歩いていても、
巡回している軍人の姿をよくみかけた。
戦火の火種は、もはや国外に留まらないという事か。
そんな明日の我が身も知れぬこの時代に、私は徴兵の任も解かれ、
「伝統芸能の起源と民族に与える影響」について、日々研究に明け暮れていた。
ただ先日感じた違和感、隣で研究を進める学者達の格の違いに萎縮させられ、
居場所を失ったような感覚に陥ってから、どうにも手が進まず、
こうして暇を見つけては、帝都の街をブラリと散策に耽ったりした。
「とは言え、のん気に散歩をする雰囲気でもないか」
去り行く隊列を見送りながら、そう呟いた。
そのままトボトボと歩き続けること数刻、眼前に見覚えのない景色が広がった。
そこは小高い丘の中腹にあり、住宅街の中に埋もれるようにひっそりと作られた
小さな公園であった。
もう花は咲いていないが、桜の木が何本も植えられていた。
今はもう新緑の季節を迎えている。
日の光を浴びて、葉が青々と照りかえっていた。
「眩しいな・・・」
太陽の光を浴びたのも、何だか久しぶりな気がする。
木々の隙間から洩れてくる輝きが、目の奥に染みてきて、とても痛かった。
でもすがすがしい痛みだった。
日の光とは、こんなに気持ちの良いものだったのか。
その直後の事だった。
ピシッ、ピシッ、という何か液体が飛び散る音が数回聞こえた後で、
ドサリと物が倒れる音がした。
音の方向を振り向く私。
そこにあったのは、赤い袴(はかま)と純白の衣(きぬ)を身に纏い、横たわる女性の姿だった。
|
|
|
← 第 五 話 : 6月3日放送分 |
第 七 話 : 6月17日放送分 → |