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ラジオ用番外編
 
智一・美樹のラジオビッグバン』(日曜日:25:30〜26:00 / 文化放送) の番組内で、関智一さんが朗読しているものをテキストにまとめたものです。
 
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シュラキ外伝 「木漏れ日の神子(かみこ)」

6月3日放送分 : 第 五 話

 

帝都の研究機関に配属となって、数週間が経った。

国宝級の古書・蔵書が、一様に並べられた本棚。
硝子箱(ガラスケース)に保管された遺産の数々。
用意された資料の山は、どれも早々手に入るものではない。
さすがは政府が作った機関である。ここは知識の宝庫だった。

同僚というには年の離れた数人の職員。皆その筋では、名のある学者達。
陽の光も届かぬこの場所で、昼夜を問わず、彼らとの共同作業の日々が続いた。

辛いとは一度も思わなかった。
これまで届かなかった世界に足を踏み入れられた喜びで、私は満ち足りていた。
一心不乱にその身を投じた。


そんなある日の事。
机の上に乱雑に積まれた書類を、意気揚々と整理する自分に気付いた。
これではまるでただの助手だな。
軽く自分を卑下してみた後で、夢から覚めたかのようにハッと思った。


「伝統芸能の起源と民族に与える影響」


神楽(かぐら)を含め、歌舞伎や狂言といった芸能の起源に、
今の人民思想が大きく影響を受けているという推論。
それを元にこの機関が作られたと言うが・・・それは・・・本当だろうか?

私の研究は、学者の彼らにしてみれば、所詮一介の学生のただのお遊びに過ぎないだろう。
本当に・・・私は・・・来るべくして、ここに来たのだろうか?
助手を務めている女性に聞いてみた。

「なぜ・・・この程度の研究が認められたのでしょう・・・」

「と言いますと?」

「実際ここに用意された、膨大で機知に富んだ研究資料に比べれば、
私の研究など取るに足らない上辺(うわべ)だけのもの。
働いている皆さんも、高名な学者ばかり。私が出る幕など、一体どこにあったのでしょうか・・・」

「そんな。そんな事を言わないで下さい。どうか落ち込まないで。
貴方が来る前の話です。諸先生方が声を揃えておっしゃっていました。
私達が不可能だった場所へ、たどり着いた若者がいる。
彼をこの機関へ迎え入れ、彼の研究を後押しする事に重きをおこう。
それがこの列強の台頭する世界で勝ち抜くため、引いては御国の為になるだろう、と」

私の研究が御国の為になる?


私は、モヤついた胸の中に、更に一層黒ずんだ霧が立ち込めるのを感じた。
 

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