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『智一・美樹のラジオビッグバン』(日曜日:25:30〜26:00 / 文化放送) の番組内で、関智一さんが朗読しているものをテキストにまとめたものです。 |
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シュラキ外伝 「木漏れ日の神子(かみこ)」
5月13日放送分 : 第 ニ 話 |
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今から語るのは、この広い世界の長い歴史に比べれば、きっと、ほんの一握りの露草が、
宵闇をそよぐ風になびいて落とした、一滴の雫に過ぎないのかもしれない。
それは小さく、儚く、そして脆い。
けれど私にとっては、長い年月を掛け大地が作った、輝く鉱石よりも美しく、
冬を越え雪の天井を突き破った春の芽吹きのように活き活きとした、生命の物語であった。
かけがえの無い、大切な、私だけの輝き。
シュラキ外伝、「木漏れ日の神子」。第ニ話。
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さて、私の物語を語るよりも先に、
まずこれを説明しておいた方が良いだろう。
朱羅姫(シュラキ)。朱羅姫という言葉。
朱色(しゅいろ)のシュ。
果てなく続く争い、またはそういった生き方、阿修羅道のラ。
そして姫(ひめ)と書いてキと読む。
彼女達「朱羅姫」が、いつから、
このように呼ばれるようになったのか、明らかではない。
だがそう名付けた奴は、随分と皮肉な言い回しをするものだと呆れたものだ。
少女達は導かれるように殺し合う。
闘いの場には、いつも少女達の鮮血が飛び交った。
だから、本来「阿修羅道」の修(しゅう)、つまり「おさめる」という字を、
当て字として朱色の「朱」に置き換えて、そのように呼んだわけだ。
彼女達は数十年に一度、この地上に目覚める。輪廻転生を繰り返して。
一度に現れる朱羅姫の人数は、数十人とも数百人とも言われていた。
そして、導かれるように殺し合うのだ。
朱羅姫同士の闘い、通称・焔舞(えんぶ)。
焔(ほむら)という字に、舞うと書いて、焔舞だ。
これもきっと、戦場で少女達から流れ出る鮮血を、
炎(ほのお)に見立てたという事だろう。
興があるのか、悪趣味なのか。
ではもう少し、突っ込んだ所から話してみる。
朱羅姫の血を引く一族が、世界中に散らばり、
人の社会に紛れ込んで息を潜め暮らしている。
普段の彼らは一般の人間と何ら変わる事はないのだが、
「一定の周期」を迎えると
その一族の若い女性から朱羅姫が目覚め、焔舞へとその身を投じていくのだ。
選抜のされ方は、もちろん人の手によるものではない。
全くの偶然、人を凌駕した運命の強制力、言わば神の手によるもの。
選ばれてしまった少女は、本人の意志には関わらず、
殺し合う事を余儀なくされるのだ。
そして朱羅姫には、切っても切れない二つの要素があった。
それは彼女達が焔舞で使用する武器、神薙の刃(かんなぎのやいば)と、
同じく焔舞の際に
着用する衣装、天涙の衣(てんるいのころも)、である。
・・・ふむ。そうだな。c
その話は、また色々と時間がかかる。
夜空の月の横顔が憂いを見せる頃に、語るとしよう。
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